Konifar's WIP

親方!空からどらえもんが!

Engineering Managerをやめた

この記事は Kyash Advent Calendar 2021 2日目の記事です。

2020年1月から2021年6月まで、1年半ほどKyashでEngineering Managerをやっていました。2021年7月からはロールを変えて、QAチームのいちメンバーとしてAPIのテストやテストの効率化に取り組んでいます。

EMをやめた経緯とやめた後の所感を備忘として残しておきます。

EMとしてやっていたこと

2020年にやってきたことは去年まとめました。

konifar.hatenablog.com

2021年は、共有口座イマすぐ入金セブン銀行出金などのリリースに向けてMobile / サーバーサイド / QAのチームでプロジェクトを進めたり、プロダクト開発フローを整えたり、エンジニア採用のリードをしたりしていました。

EMをやめるきっかけ

そんな中で、3月くらいに「なんだか最近仕事が面白くない気がする」と感じ始めたことがきっかけです。もともと「面白くないと感じた時はすぐに言いますよ」とCTOの @ymzkmct に話していたので、1on1で「なんか最近面白くないんですよねぇ」と雑に話し始めました。

こういう感情を溜め込んでいくとろくなことがないので、自分はうまく言語化できてない時でもすぐに伝えるようにしています。自分自身がEMとしてそういうネガティブ要素を正直に言ってくれた方がありがたかったので実践している感じです。相談に乗ってくれる @ymzkmct には感謝していますし、信頼しているからこそ話せているとも言えます。

なぜ面白くないと感じるかを掘り下げると理由は色々あるんですが、組織にもプロジェクトにも疲弊してきたというのが大きな要因でしょうか。事業の優先順位が色々変わる中で、楽しく苦しくという感じで何とかやってきてはいましたが、なんだか落ち込んだりイライラしたりすることが増えたなあと感じていました。

特に組織まわりで問題に先回りして手を打てておらず、メンバーに負担を強いてしまった時などは顕著だったと思います。そういった課題に常に向き合い続けるのがEMの仕事と言えばそのとおりなのですが、人間なので許容範囲はありますし限界を超える前に相談はした方がよいですね。

やりたいことを伝える

当時EMとしてメンバーと1on1をする中で、「やりたいことを伝えてほしい」というお願いをしていました。Will / Can / Must をすり合わせて目標やタスクを決めるにあたって、Will を伝えてもらった方がやりやすいからです。

「制約はいったん考えずに何かやってみたいことがあれば教えてほしい」と何度も伝えている時に、ふと自分は今EMをやりたいんだろうかと考えることがありました。メンバーにやりたいことを伝えてほしいと言っているのに、自分がやりたいことを伝えていないのはある意味不誠実だなあと感じて、現在の状況と役割の要望をdocsにまとめてCTOと話すことにしました。

色々考えた結果、「いったんプロジェクトに直接関わるロールから外れて、テストの自動化や効率化をメインで行うプレイヤーとしてやっていきたい」という話を自分から持っていきました。これは、当時自分に期待されている役割や組織の状況などをあまり考慮せずに、「こうしたらまた面白く働けそう」という100%一方的な要望です。

そこから3週間くらいかけて話をして、結果として自分の相談させてもらった方針でEMをやめることになりました。

EMの引継ぎ

自分にとって運がよかったのは、MobileチームにEMをお願いできそうな信頼できるメンバーの @kkagurazaka がいたことです。もともと彼とは1on1の中でも「ちょっと最近しんどいんだよね」という相談もさせてもらっていました。たまにキャリアの話をする中で「マネジメントロールをめちゃくちゃやりたいわけではないが、やること自体はネガティブではない」という話をしていたこともあって、5月末くらいに正式に依頼して承諾していただきました。

今は @kkagurazaka はMobileチームとQAチームのEMをやっているので、逆の立場として引き続き自分と1on1を行っています。このあたりは、EMを上下関係ではなくロールとして運用できている感じがして気に入っています。かなり負担も大きいと思うので申し訳なさも感じますが、自分としては色々相談して物事を前に進められるのはとてもやりやすいですし日々助かっています。

サーバーサイドチームのEMは、別チームのEMだった @matsuura66 にお願いしました。同じEMという立場でさらに負担を増やしてしまうことにこちらも申し訳なさを感じていますが、引き受けていただいて感謝しています。

6月中はわりと丁寧に引継ぎを進めました。自分のやっていたロールを「事務作業」「会議体」「採用」「評価」「業務委託」「現プロジェクト」「チーム課題」といった項目に分けてドキュメントにまとめて、2人のEMに2回に分けて共有しました。メンバーとの1on1で話していた内容も「EMに対する期待」「今まで上げてくれていたアラートや要望」「(konifarが聞いた範囲での) キャリア志向」「かっこいいと思う人物」などの項目にまとめて、各メンバーに確認を取った上で話しました。

Mobileチーム、QAチームのEMをお願いした @kkagurazaka は、当面Androidのプレイヤーとして実装も担当する必要があったこともあり、マネジメントロールの期待調整も行いました。具体的には、QAチームへの関わり方についてデリゲーションボードを使って認識を合わせていきました。現状はかなりメンバーに権限委譲して進める形にしています。

各メンバーとの最後の1on1では、お互いのフィードバックをしたりして少し感慨深かったです。自分がEMをやめることに対してポジティブに捉えてもらえたことに感謝しています。

7月初めは少し併走しつつ、中旬にはマネジメント関連のSlackチャネルやMTGからも抜け、完全にマネジメントロールから外れてQAチームのいちメンバーとしてやっていくことになりました。

やめた後の所感

そんなこんなでEMをやめて5ヶ月ほど経ちました。やめた後に感じたことをざっと書いておきます。

マネジメントの振る舞いがなかなか抜けなかった

マネジメントロールを経験した方はわかると思いますが、メンバーの時の思考や振る舞いとは少し切り替えが必要になります。自分がEMだったのは1年半だけですが、思った以上に身に染み付いていて、プレイヤーとしてのアウトプットに集中できず、つい各メンバーのフォローやファシリテーションなどに回ってしまうことがありました。

それもあって、7〜9月のQAメンバーとしてはそこまで高い成果は上げられなかったと感じています。10月からは修正できていて、今期はまあまあ成果を出せそうです。

情報をキャッチしにくくなった

Kyashは情報の透明度が高い方だと思っていますが、それでもメンバーになると自分から頑張って取りに行かないと見えづらくなったなあと感じます。この感覚を体感できたのはよかったです。

透明性は個々人のキャッチアップ努力とセットで考えるべきで、伝達の期待をすべてEMに寄せるべきではありません。一度マネージャーを経験していると「ここまではきっちり伝えてほしい」というフィードバックはしやすいので、よしなにやっていきたいと思っています。

退職を擬似体験できた

メンバーと最後の1on1をやっている時や引継ぎ資料を作っている時は、なんだか退職する時のような感慨深い気持ちになりました。

気持ちもリフレッシュできましたし、属人化もある程度解消できてよかったと思います。もともとチームメンバーや組織が嫌で仕事がつまらなくなったわけでもないですしね。

マネージャーをやめる選択肢ができた

完全に後付けの話なんですが、マネージャーをやめる事例を作れたのはよかったんじゃないかと思っています。

「マネージャーに興味はあって経験はしたいけどずっとやりたいかと言われるとわからん」という人は意外と多い気もしていて、そういう人にとって「やめる選択肢もある」というのは背中を押す要因になるかもしれません。

また、チームにマネージャー経験のある人がいるとチーム全体も強くなると思うので、マネージャーとメンバーを行き来する選択肢が増えることは組織にもプラスになるんじゃないかと考えています。

チーム体制や評価制度など色々と事情もあると思うのでなかなか難しい話ですが、マネージャーもメンバーもやりたいこととやりたくないことをもっとわがままに伝えあっていけるといいですね。

ICの評価むずかしい

自分はいわゆる IC (Individual Contributor) になりました。ICとマネージャーは、上下関係ではなく役割の違いです。すごく単純化して言えばメンバーのマネジメントの有無の違いでしかありません。

評価制度にもよりますが、高いグレードのICにはマネージャーと同レベルの成果が求められます。そういう面で、ある程度のインパクトを期待されるICの評価はとても難しいですね。

マネジメントであればチーム全体の成果を大きくすることでインパクトを出せますが、ICが経営にもポジティブな影響を与えられるようなインパクトを出すにはどうすればいいか悩みどころです。

自分の結論としては、結局マネジメントと同じようなスキルが求められるんじゃないかと思ってはいるんですが、もう少し言語化してKyashのICの評価制度をマネージャーと一緒に作っていけるといいなと思っています。他社のICの評価制度の話も聞いてみたいです。

Mobileチームがとてもいい感じ

@kkagurazaka がマネジメントを引き継いでくれたMobileチームをチーム外から見ているんですが、めちゃくちゃいい感じに見えます。事業上必要な開発はちゃんと進めつつ、中長期を見据えてiOSAndroidの開発速度改善の取り組みにもチャレンジできていて、自分がEMだった時には全く手が回っていなかったところを着実にやれています。

すごくいいなあと思いつつ若干の悔しさと焦りも感じていて、自分もQAチームのメンバーとして成果を出さねばと身が引き締まる思いです。

ちなみにAndroidはエンジニアを募集しているので、興味があれば是非ご応募ください。カジュアル面談も気軽にどうぞ。

QAチームもいい感じ

自分がメンバーとしてやっていってるQAチームにはもともと経験豊富な @tokki_yuka77 が1人いましたが、同じチームメンバーとして働くとこれまで以上に刺激と学びがあります。自分が知らないことも多く変化が求められる環境だと楽しさを感じるのかもしれませんね。

そういえばQAチームもテストエンジニアを募集しています。興味があれば是非ご応募ください。

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これから

Kyashに入社してちょうど4年が経ちました。実は自分はこれまでだいたい4年周期くらいで転職しているので、あのままEMを続けていたら違う会社に目が行って転職していたかもしれません。

まあ転職自体はよいことだと思うんですが、今のKyashのチームメンバーやプロダクトは好きなので別に離れたいわけではないなあとも感じていたわけですね。完全に視野が狭まる前に少しわがままになってCTOやチームメンバーに相談して色々と調整してもらえてよかったと感じています。

マネージャーはマネージャーをやめることも決めていいのだと学びましたが、当然まわりの協力なしには実現できません。そういう意味で、最初に相談に乗ってもらった @ymzkmct、EMを引き継いでもらった @kkagurazaka@matsuura66、マネジメントしていたMobile / QA / サーバーサイドのメンバーにはとても感謝しています。

おかげさまで、今はQAチームのプレイヤーとしてプレッシャーはありつつも楽しく働けています。圧倒的成果を出していきたいですね。

また、もし今後またマネジメントロールに戻るとしてもまた違う気持ちで臨めそうです。前よりもうちょっとうまくやれそうな気もしますし、万が一あまりにもしんどくなった時はまたプレイヤーに戻ることも含めて周りに相談していけばいいですしね。


では、最後はいつものようにこれを置いておきます。Let's Kyash!

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