Konifar's WIP

親方!空からどらえもんが!

丸川正人の達人的気遣い

SHIROBAKO Advent Calendar 2021 始まりました。今年もよろしくお願いします。

SHIROBAKO Advent Calendarも7年目に入ったので、そろそろ劇場版の話をしましょう。

劇場版よかったですね。劇場版の中で印象的なシーンと言えば、開始30分くらいの『カレーとおでんの店。キッチンべそべそ』で見せた宮森の涙をあげる人も多いでしょう。正直に言うと、自分はあのシーンまでの流れがつらくてBlu-rayを買ってから何日かは鑑賞する気になれませんでした。

今は普通に見れるようになったので見返してみましたが、あのシーンの丸川正人 (元社長) の表情や振る舞いがめちゃくちゃいいんですよねぇ。宮森が店に入ってきた時から順に見て行きましょう。


丸川は「お、おはよう宮森さん」と笑顔で声をかけますが、宮森はあからさまに浮かない顔を見せます。この表情の変化に、感情の機微に敏感な丸川が気付いていないはずはありません。ですが、そこで返した言葉は「何かあったの?」や「どうしたの?」ではなく、 「何か食べる?」 です。表情も微笑みのまま変えずに、「何か食べる?」なんですよ。いいですよねぇ。むしろその丸川のいつもどおりな具合に宮森の方が驚いて「あ...カレー...ください」みたいな感じで少し反応が遅れているくらいです。

宮森の「カレー...ください」に対して、「待っててね」とか「はいよ」とか答えるわけでもなく、微笑んだまま少し目を伏せて無言でカレーを作りにいくところもまたいいですね。

カレーが出てきた時も宮森の表情は暗いままです。二口三口食べ進めるうちに、宮森の目からは大粒の涙が浮かんできます。丸川は、そんな宮森を段ボールの中の荷物を取り出しながら見ます。ここで明らかに見ているんですが、何の変化もなくそのまま作業を続けているんですよ。これが本当にすごい。こういうシーンでよくあるのは、ちょっとハッと気付いた動きを入れてからまた気づかないフリをして作業するとかそういう振る舞いじゃないですか。丸川にはそういう変化は全くありません。そして極め付けは 「このカレー、ちょっと辛かったかな?」 「おかわりするかい?」 です。かっこいいですね。

この時の丸川は宮森に対して気を遣っているのでしょうか。もはや気を遣っていることにすら気づかせない達人の域に達している気がします。

たぶん若かりし頃の丸川なら「うん、今すぐ作るよ!!」と満面の笑みで言ってしまっていたかもしれません。年齢や経験を重ねればこういった振る舞いをできるようになるんでしょうか。おそらく、デスクから社長になるまでの間に何度も人の感情とぶつかってきた結果、今の達人的気遣いが身に染み付いたのではないかと思います。

丸川は1on1での傾聴もきっとめちゃくちゃうまいんでしょうね。第20話『がんばりマスタング!』で太郎と揉めた後の平岡に対しても、うまく意見を聞き内省を促していました。杉江、丸川などSHIROBAKOにはロールモデルにしたいナイスシニアが多いので、自分も擬似体験しながら咀嚼していきたいと思います。

それでは、今年もどんどんドーナツどーんといきましょう。